特発性造血障害に関する調査研究

平成29年度~ 令和4年度
研究代表者 三谷絹子 (獨協医科大学)

研究計画Research Project

研究計画

R4年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)交付申請書抜粋

研究課題名(課題番号) 特発性造血障害に関する調査研究(20FC1018)
研究代表者 三谷絹子(獨協医科大学)
研究事業予定期間 令和2年4月1日から令和4年3月31日までⅡ期目3年計画の3年目

研究組織

研究者名 分担する分担する研究項目 所属機関・部局・職名
三谷 絹子 研究全体の総括 獨協医科大学・医学部・教授
山﨑 宏人 再生不良性貧血 金沢大学・附属病院・准教授・准教授
石田 文宏 赤芽球癆 信州大学・医学部・教授
赤司 浩一 骨髄線維症 九州大学・大学院医学研究院・教授
保仙 直毅 溶血性貧血(特発性夜間ヘモグロビン尿症) 大阪大学・大学院医学系研究科・教授
宮﨑 泰司 骨髄異形成症候群 長崎大学・原爆後障害医療研究所・教授
高折 晃史 骨髄異形成症候群 京都大学・大学院医学研究科・教授
黒川 峰夫 骨髄異形成症候群 東京大学・医学部附属病院・教授
鈴木 隆浩 骨髄異形成症候群・鉄過剰症 北里大学・医学部・教授
神田 善伸 造血幹細胞移植 自治医科大学・医学部・教授
真部 淳 小児再生不良性貧血・骨髄異形成症候群 北海道大学・大学院医学研究院・教授
張替 秀郎 鉄芽球性貧血 東北大学・大学院医学系研究科・教授
太田 晶子 疫学調査 埼玉医科大学・医学部・准教授
東條 有伸 ランゲルハンス細胞組織球症 東京医科歯科大学・理事
井上 義一 ランゲルハンス細胞組織球症 近畿中央呼吸器センター・臨床研究センター・センター長

研究目的

特発性造血障害調査研究班は40年以上の歴史を有し、再生不良性貧血、赤芽球癆、溶血性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症の5疾患を主な対象として、わが国を代表する専門医・研究者が集い、疫学、病因、病態発生、臨床病態、治療に関する研究を行ってきた。その成果は特発性造血障害疾患の「診療の参照ガイド」(平成16年度初版、平成22年、25年、26年、令和元年改定)にまとめられている。学会との連携体制も強化され、「診療の参照ガイド」は令和元年改訂版より日本血液学会 診療委員会による査読を受けている。平成23年度以降は各領域で、患者の実態調査、客観的指標に基づく診断基準、重症度分類の確立・改定、医療水準の向上を目指した研究活動に焦点を当てている。既に、赤芽球癆、MDS, 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、骨髄線維症及び先天性造血不全症候群のレジストリが構築されている。前期より研究対象となったランゲルハンス細胞組織球症(LCH)に関しては、レジストリ構築を目指して全国調査が進行中である。今後は、より的確な診断法・治療法の確立のために未解決な問題と取り組む必要があり、全国の診療施設や関係学会の参加の下に、各疾患の登録と検体収集を通じて大規模な研究推進を行う。指定難病患者データベースを有効に活用する。また、本領域では新規治療法が数多く登場しつつあるため、新規治療法の適切な使用法や効果予測因子を探索する。本年度は、再生不良性貧血に近年導入された血小板受容体作動薬の臨床的位置付けを臨床試験で明らかにする予定である。赤芽球癆では、治療法の確立と予後改善を目的に、前向き研究を継続する。PNHでは国際PNH専門家会議及び日本PNH研究会との連携による全国規模の患者登録体制の確立、診断検査の一元化と抗体医薬の使用法の標準化、病態進展の機序解明を行う。MDSについては、前方視的登録研究を難病プラットフォームに移行させ、今後も一元的な多施設症例登録と中央診断制度を継続し、両疾患の臨床像と治療成績の把握、診断一致率の向上、ならびに標準的治療法の開発のための基礎資料とする。移植決断例の予後に関する前向き臨床研究も進行中である。骨髄線維症では、新規治療法の適切な使用法や効果予測因子を探索する。小児科領域では、小児血液・がん学会の前方視的登録と連携して、調査研究を推進する。

期待される効果

  1. 再生不良性貧血:血小板受容体作動薬の至適な使用方法が明らかになる。
  2. 赤芽球癆:前向き観察研究により、予後、予後不良因子、鉄キレート療法の効果が明らかになる。
  3. 溶血性貧血:国際的に診断検査の一元化がなされ、新規抗体医薬の使用法が標準化される。
  4. 骨髄異形成症候群:一元登録システムで本邦症例の臨床的特徴と予後因子を明らかにすることで、適切な治療法の選択が可能となる。病態進展や発症リスクの予測も可能となる。
  5. 骨髄線維症:新規治療法開発に向けて、わが国の疾患データが蓄積される。長期予後、予後予測因子、造血幹細胞移植の成績が明らかになる。
  6. 疫学:指定難病患者データベースを解析することにより、本邦における疫学像、診療実態、予後が明らかになる。また、データベースの有効活用、有用性評価と改善が進む。
  7. 造血幹細胞移植:MDS・再生不良性貧血に対する造血幹細胞移植の適応、移植までの治療方法、至適な実施時期についての解析結果が得られ、移植成績の改善と患者のQOが向上する。
  8. 小児科領域:全国規模の調査研究を遂行し、各疾患の取り扱いが標準化される。
  9. ランゲルハンス細胞組織球症:成人LCHの診療実態が初めて明らかになり、レジストリ構築と「診療の参照ガイド」の策定を進めることができる。
  10. 全疾患:3年目年度末に疾患別「診療の参照ガイド」の改訂を行う。

研究計画・方法

本研究では、関連諸学会の協力を得て、各疾患において症例登録システムを充実させ患者の実態把握を行い、本邦の実態に即した治療法の開発・最適化の探索に努める。得られた知見は、診断基準の策定や「診療の参照ガイド」の改訂作業(3年目令和4年度予定)を通じて広く本邦の臨床現場での活用を図り、医療の均てん化に資する。さらに、難治性疾患実用化研究事業「オミクス研究班」(東京大学 医科学研究所 宮野 悟代表)と共同して、病因解明を通した新たな診断基準策定の基礎を作る。

  1. 再生不良性貧血(AA)(中尾): 令和2年度に、① EPAG抵抗性AAを対象としたROMIの臨床試験を開始する。②新規発症のAA患者を対象とした前向きの臨床介入試験「ウサギATG・シクロスポリン・EPAG併用療法の有用性の検討」を継続する。
  2. 赤芽球癆(石田):令和2、3年度に前向き観察研究(PRCA2016研究:UMIN000024807)の予後調査を継続し、令和4年度には、予後、予後不良因子、鉄キレート療法の有効性について解析する。
  3. PNH(金倉):令和2年度に、PNHコンセンサス会議(1st IPIG Workshop)に参加し、国際診断基準の策定に関与する。COMPARE試験の成果をまとめる。PNH国際レジストリを推進し、令和4年度に解析計画をまとめる。
  4. MDS:(高折)前班で継続中であった「AA/MDSの前方視的登録研究」の難病プラットフォームへの移行を完了する。令和4年度にはゲノム情報も組み込んだ解析を行う。(宮﨑)令和2年度に低リスク症例、令和3年度に高リスク症例をそれぞれ集積し(1000例程度)、臨床像と治療実態を解析する。令和4年度には、既存の予後予測スコアの適用を試みる。(黒川):令和2年度に、低リスクMDSの頻度、治療選択と予後に関する全国二次調査を行う。(鈴木):令和2年度に、自施設でのMDS-RSを含む疫学調査研究を行い、令和3、4年度にはMDS-RSにおけるSF3B1遺伝子変異の有用性について検討する。
  5. 骨髄線維症(赤司):①原発性骨髄線維症については、前方視的患者登録(780名)のフォローアップ調査を継続し、②2次性骨髄線維症については、前方視的新規症例登録を継続する。令和4年度迄に、それぞれ、予後、現状の治療実態、及び、造血幹細胞移植の治療成績を明らかにする。
  6. 疫学(太田):令和2年度に再生不良性貧血について、指定難病患者データベース(臨床調査個人票)を利用し、臨床疫学像を把握する。令和3年度に後天性赤芽球癆、令和4年度には自己免疫性溶血性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症に研究対象を拡大する。
  7. 移植(神田):①骨髄異形成症候群に対する造血幹細胞移植の前方視的コホート研究について、令和2年度に観察を完了し、令和4年度に解析結果を発表する。②骨髄異形成症候群や再生不良性貧血に対する造血幹細胞移植における移植前処置と予後との関連について、令和2年度に研究計画書を作成し、令和4年度に解析結果をまとめる。
  8. 小児:(真部)①令和2年度に、小児期からAYA世代に発症するMDSの登録事業を開始し、令和3年度に登録例に対する遺伝子探索を行う。②令和2年度にFanconi貧血、令和3年度に先天性角化不全症、令和4年度に遺伝性鉄芽球性貧血について、AYA 世代における特徴を明らかにする。(張替)令和2年度に、日本における鉄芽球性貧血の症例を集積し、臨床データを収集する。令和4年度までに、これらの情報のデータベース化を進める。
  9. LCH(東條):令和2年度に、個別調査票を全て回収し、臨床データを分析して本邦における成人LCHの実態を明らかにする。令和3、4年度に、レジストリシステムを構築する。また、血清学的バイオマーカーを同定する。

研究事務局

獨協医科大学 内科学(血液・腫瘍)
〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880
Tel: 0282-86-1111 内線2740
研究代表者 三谷絹子
事務局担当 今井陽一

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研究代表者 三谷絹子
事務局担当 今井陽一